今年、日本で一番早い満開宣言!という触れ込みで始まった東京の
桜もこの数日が名実ともに満開といえそうだ。
東京中が桜に酔いしれているなか、飯田橋、江戸川橋界隈で仕事の
打ち合わせが2日続いた。
飯田橋の駅からならば、10分も歩けば靖国神社である。そして、靖
国神社脇の靖国通りを横断すると、そこは皇居の千鳥ヶ淵。共に日
本を代表する桜の名所。
そこまで近いのであれば、足を延ばして満開の桜を眺めに行くのは
致し方ないことだ・・・・と、つい独り言。

一方、江戸川橋界隈も見事な桜を楽しめる東京の花見スポット。
この2日間は仕事に名を借りて花見をしっかりと楽しむことにした。
人生も後半。あと何回 春を迎えることができるのやら。
ヨレヨレおじさんは心ゆくまで春を満喫・・・・・・・・・
いやいや、それにしてもやけに人が多い。
昔から桜の季節に人が多いのは当たり前。それも東京なのだから。
それこそ人でごった返す花見は幾度も経験している。が、やはり
人が多い。閉口するとかを通り越して、その人波の中に入りたく
ない。そう、拒絶した。
原因は考えるまでもない。
そう、訪日観光客が多いのである。一昨年の春よりも、昨年の春
よりも、確実に多い。このご時勢、仕方がないのだろう。
満開の桜を湛える千鳥ヶ淵に足を踏み込むことなく、遠目のさら
に遠目から桜を愛でて、早々に退却。
さてJR飯田橋駅は、西口を出て右を向けば外堀通りがある。
靖国神社の第一鳥居下から続く道を歩いてくると、JR飯田橋
駅西口前のこの道になる。そのまま道に従い外堀通りを向こ
うへ渡れば神楽坂下で、九段から続くこの道が早稲田通りだ。
[地図:mapion]
神楽坂下に立つ。その名のとおり、ここから先の神楽坂は上りになる。
善い悪いではなく、その昔酒呑みに通っていた頃と比べ、店の数も町の
雰囲気もまるで違っている。
それでも、坂を上れば坂上の手前に毘沙門天の善国寺があり、その先
5分ほど歩いて左を向けば大手出版社新潮社の社屋を見ることができる。
見たからといって何か素晴らしいとか、見れば何かあるということはない。
新潮社を左に見てから200メートルほどで、早稲田通りは変形の四差路
となり道幅を広げる。牛込天神町の交差点である。
[地図:mapion]
ここからは榎町、山吹町。記憶では小さな印刷工場がこれでもかという
ほど集まっていた町だ。今もその数こそ減少したものの、大日本印刷
榎町工場を幹にして小さな工場が稼働している。
この交差点。直進して榎町を抜ければ、その先が早稲田町である。早稲
田大学の早稲田町。現在、早稲田大学があるのは西早稲田町1丁目だと
記憶しているが、とにかく早稲田町になる。
牛込天神町交差点を右に曲がると道は下りになる。緩い坂である。
坂を下り、道は交差点から真っ直ぐ続く。牛込天神町交差点から600メー
トルほどで目白通りと交わる江戸川橋交差点にたどり着く。
そのまま進行方向に交差点を抜けると「江戸川橋」がある。
この江戸川橋を起点に川沿いを細長く500メートルほどの緑地が続く。
江戸川公園、桜の名所だ。
「江戸川」と名にあるが、歴とした神田川である。その神田川、江戸時代
には御留川(おとめがわ)。その後は昭和の半ばまで江戸川と呼ばれて
いたと文献にある。

どこの桜もそうなのだろうが、ここ江戸川公園も提灯の灯りに照らし出さ
れる夜桜の美しさは、儚い春の夢のようである。
さて、そんな桜を求めて移動している途中、青森県のアンテナショップ
「あおもり北彩館東京店」が目に留まった。
JR飯田橋駅西口を、先ほどの神楽坂方面とは反対側、駅出口の左に進む
(靖国神社方向)。ほんのわずかな距離(130メートル程)に、そのアンテ
ナショップがある。この日は青森のどこかの団体がショップの前のわずか
なスペースにテントを張っていた。
「あおもり北彩館東京店」が入店しているこの建物は、隣のビルに比べ数
メートル後退している。残念なことに隣のビルとの境界に塀が作られてい
るため、駅から歩いてきた人にはアンテナショップが見えない。塀を越え
て初めて店に気付く。商機を少々逸することになる。
[写真:google earth]
そのアンテナショップの店先スペースにテントが張ってある。テントでの
販売はこの日が最後の様子。展示品も残り少なく、すでに店(テント)終いに
向けて片づけに入っているようだった。
青森県大鰐温泉「鰐come」という、道の駅のような温泉施設の皆さんとのことだ。
[地図:google map]
店先で酒粕1kgのパックに見入っていたら、「いいのがある」と20代半ばの
女性が声を掛けてきた。差し出す名刺には「おおわにコンシェルジュ」と。
「“もやし”は如何ですか?」と言う。もやしの名は“大鰐(おおわに)温泉もやし”。
手渡されたパンフレットによれば、350年以上前から栽培されてきたと記さ
れている。津軽三代藩主信義公が湯治する際に必ず献上されていたとも。
大きい。豆がかなり大きくて茎も太くしっかりしている。そして何より長い。
30センチはあったのではないだろうか。一昨夜に食べてしまっているから、
詳細に思い出すことができない。しかし、とにかく大きい(かった)のである。

[写真:大鰐町農林課大鰐温泉もやしレシピ集]
実はこのもやしを目にしたのは初めてではない。ただ、その時は食指が
動かなかった。それでも、こうして妙齢の女性が段ボール箱の中に僅か
2つ残っているもやしの“ひとつ”を勧めてくれるのも、何かの縁である。
売れ残った商品を「さっさと売り捌こう」としているなどとは、夢にも
思いはしないのだ。あくまでもこれはご縁である。
もやしを買って、ご縁を手にする。
もちろん、数日間にわたるテント販売で最後に残った商品だけに、
“新鮮さ”や“溢れるような栄養”は期待しない。
それを求める野暮でもない。嫌なら買わなくてよいのだから。
そう、ご縁をいただく。
どうやっていただく? グリーンカレーにしていただく。
グリーンカレーには食感のはっきりした食材も合う。たとえば竹の子。
大鰐温泉もやしを見た瞬間、頭の中にグリーンカレーが浮かんだ。
ということで、グリーンカレーをサっと作ってしまった。
なかなか合う。いつものカレーとは違う、豆のコリッという食感が楽しい。
犬も歩けば・・・・ヨレヨレおじさんも「大鰐温泉もやし」にぶつかった。
残り少ない人生の春の一日、“桜”と“もやし”で楽しむことができた。
小さな幸せ、大きな幸せ。我が身に訪れてくれるなら、どちらでも幸せ
なのである。
平成29年春。
桜満開、ご縁と青森の“大鰐温泉もやし” これで十分。
。